ハラスメント研修の実施報告書、何を残せば足りるか

ハラスメント研修をやったあと、記録として何を残すべきか迷う総務担当者は多いはずです。結論は、法定の様式はなく、実施概要・受講者名簿・カリキュラムと法令の対応表の3点があれば足ります

労働局の報告徴収で見られるのは方針の整備状況・窓口の設置状況・周知の実態であり、指定の書式提出ではありません。だからこそ、自社で「何を書けば説明できるか」を決めておく必要があります。

この記事では、実施報告書の項目・修了証の要否・効果測定の読み方・記録の保管先を、実物の様式構成をもとに整理します。

法定の様式はない。労働局が確認するのは実態

ハラスメント対策の措置義務には、実施記録の作成・保存を義務づける条文も、指定された様式もありません。

労働局の報告徴収で確認されるのは、方針を文書化して周知したか、相談窓口を設けたか、周知の実態が伴っているかという3点です。

つまり「様式Aを提出すれば終わり」という制度ではなく、聞かれたときに「いつ・誰に・何を実施したか」を示せる記録を自社で持っておくことが実務上の対応になります

この前提を踏まえたうえで、記録として何を残すかを次の章で整理します。

実施報告書に入れる3項目

実施報告書は、実施概要・受講者名簿・カリキュラム一覧と法令対応表の3つの塊で構成します。

項目 記載内容
実施概要 実施日(期間)、実施形式(集合・オンデマンド配信等)、対象者、修了要件
受講者名簿 氏名、所属、受講日(または受講期間)、修了状況
カリキュラム一覧と法令対応表 実施した各回のテーマと、措置義務のどの項目に対応するかの対応関係

カリキュラム一覧と法令対応表は、方針の周知・窓口の案内・対応方針の理解といった義務項目のどこをこの研修がカバーしているかを一覧化するものです。労働局に説明を求められた際、この対応表があるかどうかで説明のしやすさが変わります

当社の「ハラスメント対策オンデマンド研修」では、この3項目をA4・3ページの実施報告書としてまとめ、受講企業に納品しています。1ページ目に実施概要、2ページ目に受講者名簿、3ページ目にカリキュラムと法令対応表という構成です。

修了証を個人ごとに発行する必要はない理由

修了証の個別発行は必須ではありません。理由は2つあります。

1つ目は、修了証そのものに法定の様式がないことです。個人ごとの修了証は、実施の証拠としては受講者名簿の1行と重複します。

2つ目は、会社が提出・保管する記録として必要なのは、個人単位の証明書ではなく、誰が受講し修了したかが一覧で分かる名簿だという点です。実施報告書に受講者名簿を含めておけば、修了証がなくても提出用の記録として足ります。

当社の研修でも、修了証は個別発行せず、実施報告書の受講者名簿に修了状況を記載する形で一本化しています。

効果測定は2軸で見る

効果測定は、理解度チェックと受講後アンケートの2軸で行います。

理解度チェックは、研修内容を正しく理解できたかを測る客観的なスコアです。

受講後アンケートは本人の自己申告を測ります。実際の場面で行動できる自信があるか、過去に類する場面に遭遇したか、相談窓口の存在と手順を知っているか、の3点です。

この2つを別々の軸として見ると、理解度チェックの平均点が高い一方で、行動の自信を問う設問には「あまり自信がない」「まったく自信がない」と答える受講者が一定数出るという結果になることがあります。

知識としては理解できているが、実際の場面でどう動くかまでは自信が持てていない、という状態です。

この差が、次の打ち手を判断する材料になります。自信がないと答えた割合が高ければ、ロールプレイ形式の研修を追加で検討する、相談窓口の認知が低ければ、窓口の案内をもう一度周知する、といった対応です。

理解度チェックとアンケートのどちらか一方だけでは、この差は見えません。2軸で記録しておくことに意味があります。

集合研修を自前で実施する場合の記録テンプレート

外部の研修会社を使わず、自社で集合研修を実施する場合も、記録すべき項目は同じ考え方に沿います。

記録の種類 記載項目
出席簿 実施日、氏名、所属、出欠
使用資料 資料名、版数(改訂日)、配布方法
アンケート 実施日、回答者数、理解度・自信・窓口認知の設問結果の集計

出席簿と使用資料は、周知の実態を示す最低限の記録です。アンケートは前章の2軸の考え方をそのまま反映し、理解度と自己申告の両方が分かる形にしておきます。

いずれも様式を新しく作る必要はなく、Excelやスプレッドシート上で表形式にまとめれば足ります。重要なのは、様式の体裁ではなく、いつ・誰に・何を実施したかが後から追える状態にしておくことです。

記録の保管方法

保管期間は法定されていません。次回の研修を実施するまで、または就業規則等の労務関係書類と同じ場所に継続して保管しておくことをすすめます

労働局の報告徴収は突発的に求められることがあるため、「探せば出てくる」ではなく、担当者が変わっても場所が分かる状態にしておくことが実務上の備えになります。

よくある質問

Q. 実施報告書がないと、労働局の調査で問題になりますか。

実施報告書という書式の提出義務はありません。ただし、方針の周知や窓口設置の実態を説明できないと、報告徴収の際に説明に困ることがあります。記録を残しておくことが実務上の備えになります。

Q. アンケートの設問は自社で自由に決めてよいですか。

自由に設計できます。ただし理解度チェックとは別に、行動の自信や相談窓口の認知といった自己申告の設問を含めると、理解度スコアだけでは見えない課題を把握できます。

Q. 受講者が少人数の場合も名簿は必要ですか。

人数にかかわらず、氏名・所属・受講日・修了状況が分かる名簿を残しておくことをすすめます。人数が少ないほど、後から個別に確認するより名簿で一元化しておくほうが手間がかかりません。

Q. この記事の内容は、いつ時点の情報ですか。

2026年9月時点の情報です。自社の状況が要件を満たすかどうかは、管轄の労働局か顧問の社会保険労務士に確認してください。</content>

高畠 将大

代表取締役

高畠 将大

小樽商科大学卒業後、2011年に雪印メグミルク株式会社へ入社し、海外事業所の新規立ち上げに携わる。2018年に個人事業主として独立し、マーケティング・ブランディング支援などを手がける。2024年に株式会社リバラクトを創業、代表取締役に就任。

自社での対応が難しい部分は

ハラスメント対策オンデマンド研修

2026年10月1日から義務になるカスタマーハラスメント対策・求職者等セクシュアルハラスメント対策に対応。全従業員への周知と、伝えた記録の保存が一度にできます。

1社33,000円(税込)から、周知も記録も一度に完了します。

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