とはいえ、実際に研修を組むときは「何分やればいいのか」「短時間でも成立するのか」が分からないまま止まってしまいます。この記事では、形式別の所要時間と、シフト勤務でも回せる組み方を整理します。
法令は時間数を定めていない
労働施策総合推進法第33条とカスタマーハラスメント対策指針は、周知の方法の一つとして研修を挙げていますが、研修時間の下限や上限は定めていません。
指針が確認するのは「方針を全員に伝えたかどうか」「相談窓口が機能する体制になっているかどうか」であり、研修の分数ではありません。3時間の研修でも15分の研修でも、全員に方針が伝わり記録が残っていれば、周知の要件を満たす点は変わりません。
自社の対応が要件を満たすかどうかは、管轄の労働局か顧問の社会保険労務士に確認してください。
形式別の所要時間
研修の実施形式によって、所要時間の目安は大きく変わります。
| 形式 | 所要時間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 集合研修 | 半日程度(3時間前後)の枠が多い | 会場・日程調整が必要。全員を一度に集める必要がある |
| オンデマンド研修(自社例) | 全従業員向け約75分・管理職向け約63分(1話5分前後) | 各自のタイミングで分割視聴できる |
| 自社で資料を配布して読んでもらう | 明確な所要時間なし | 読了したかどうかを確認できない |
集合研修は半日程度の枠で組まれることが多く、シフト制の現場では全員を一度に集めること自体が難しい場合があります。資料配布は最も手間がかかりませんが、実際に読んだかどうかを確認する手段がなく、記録として弱くなります。
延べ拘束時間の比較(10名・30名の会社の場合)
集合研修とオンデマンド研修では、従業員の延べ拘束時間に差が出ます。以下は移動時間・日程調整の時間を含まず、研修そのものの視聴・受講時間だけを単純にかけ算した数字です。
| 従業員数 | 集合研修(3時間×人数) | オンデマンド研修(75分×人数) |
|---|---|---|
| 10名 | 30時間 | 12.5時間 |
| 30名 | 90時間 | 37.5時間 |
集合研修は全員が同じ3時間枠を使うため、人数が増えるほど延べ拘束時間も比例して増えます。オンデマンド研修は1人あたりの受講時間が短く、各自が別々の時間帯に視聴できるため、シフトへの組み込みがしやすくなります。
シフト勤務での運用例
1話5分前後に分割されている研修であれば、1日の中で数分ずつ視聴する組み方ができます。以下は全15話(約75分)を1週間で終える場合の一例です。
| 曜日 | タイミング | 視聴する話数 | 目安時間 |
|---|---|---|---|
| 月 | 朝礼前 | 1話 | 5分 |
| 月 | 休憩後 | 2話 | 10分 |
| 火 | 朝礼前 | 1話 | 5分 |
| 火 | 休憩後 | 2話 | 10分 |
| 水 | 朝礼前 | 1話 | 5分 |
| 水 | 休憩後 | 2話 | 10分 |
| 木 | 朝礼前 | 1話 | 5分 |
| 木 | 休憩後 | 2話 | 10分 |
| 金 | 朝礼前 | 3話 | 15分 |
1日あたり15分前後の視聴時間を確保できれば、1週間で全話の視聴を終えられます。シフトによって出勤日が異なる従業員でも、各自の出勤日に合わせて視聴を進められます。
受講時間は厚生労働省が示す労働時間の考え方では労働時間になる
研修の受講時間は、正社員・パート・アルバイトといった雇用形態を問わず、労働時間として賃金の対象になります。朝礼前や休憩中に「各自の空き時間で見ておいてください」という運用は、受講時間分の賃金が発生していない状態になる可能性があります。
研修をシフトに組み込む段階から、勤務時間内に視聴時間を確保する前提で計画してください。休憩時間に視聴させる場合は、その時間を休憩ではなく労働時間として扱う必要があります。
短くても記録が残っていれば実施の証明になる
労働局の報告徴収で確認されるのは、方針の整備状況・窓口の設置状況・周知の実態です。研修時間の長さそのものは確認項目に含まれません。
そのため、全話の視聴ログ、講座ごとの理解度チェックの結果、受講後アンケートの回答が残っていれば、研修時間の短さは実施の証明を弱めません。
「誰が・いつ・何を視聴したか」が個人単位で残る形式のほうが、口頭説明や資料配布よりも実施の裏付けとして扱いやすくなります。
自社の「ハラスメント対策オンデマンド研修」は、全話視聴と理解度チェック、受講後アンケートの完了をもって修了とし、実施報告書に受講記録をまとめます。料金は1社33,000円(税込・受講者10名まで)、11名目以降は1名につき3,300円(税込)を加算する体系です。
よくある質問
Q. カスハラ研修は何分以上やれば義務を満たせますか。
時間の下限は法令に定められていません。義務を満たす条件は、方針が全員に伝わったことと、その記録が残っていることです。研修の分数だけで充足・未充足が決まるわけではありません。
Q. 短時間の研修は労働局の報告徴収で不利になりますか。
不利になるとは限りません。報告徴収で確認されるのは、方針の整備状況・窓口の設置状況・周知の実態です。視聴ログや理解度チェックの結果など、実施の事実を示す記録があれば、時間の短さは不利な材料にはなりません。
Q. 資料を配布して各自で読んでもらう方法でもいいですか。
周知の方法としては可能ですが、実際に読んだかどうかを確認する手段がない点に注意が必要です。読了の確認ができる仕組み(チェックシートの提出など)を別途用意しない場合、記録としては弱くなります。
Q. シフト勤務の従業員に研修を受けさせる時間は、休憩時間を使ってもいいですか。
研修の受講時間は労働時間として扱う必要があるため、休憩時間に視聴させる場合はその時間を休憩ではなく労働時間として扱ってください。雇用形態を問わず同様です。
Q. この記事の内容は、いつ時点の情報ですか。
2026年9月時点の情報です。自社の対応が要件を満たすかどうかは、管轄の労働局か顧問の社会保険労務士に確認してください。